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地下電線計画

政府は「地下電線計画」を全国で実施し、日本中の電柱という電柱を全部抜き取った。
電柱が町から消えれば、町の景観も空もきれいになるし、鳥の糞がやみくもに落ちてくることもない、凧上げしても電線にからまり危ないということもないので人間にとっては大喜びだったが、犬社会にとっては大問題だった。


何故なら、電柱が無くなったことで、犬が“なわばり“を示せなくなり犬達が勝手に境界線を設けるようになったからだ。そのため“排他的なわばり”とも言える場所での犬同士の争いが絶えなくなったのだ。
電柱が犬にとってそんなにも重要なものだったなんて知らなかったので人間達はたいそう驚いたものだった。
そのうち争いは激化して、飼い主の言うこともきかなくなり、血で血を争う抗争へと発展し、これを恐がった人間達は外出をできるだけ避けるようになり、江戸時代以来の犬がはびこる社会になった。

それを見かねた保健所もこ、れに対応すべく、その当時2大勢力とされた「アコ」という東町のボス犬と「キラ」という西町のボス犬の間に入り、「ちょうど東町と西町の間に抜き取った電柱が大量に積み上げられた廃材置き場がある。 そこを境界として不可侵条約を結ぼうじゃないか」と提案した。


アコは5歳で、日本一とされる真っ白で神々しい毛並みを持つ雑種。 圧倒的なカリスマ性とその犬望は誰しもがその場にひれ伏すしかない。普段は大人しいが一度キレると誰も手が付けられない犬だ。そんなアコは部下犬達に「仏と阿修羅の顔を持つ雄」として畏れられている。
キラは8際でライオンのような茶色の毛並みを持つ四国生まれの甲斐犬。 処世術に長け犬の心を操るのが上手であれよあれよと自分の中にとり込んでしまう。 実にうまい口と犬選で軍備配置し、西町を飲み込んだ。 そんなキラは、「まむしのキラ」として畏れられている。

そんなアコもキラも、双方悩んだあげく、このまま争っても保健所に捕獲され“処分”されてしまうだけだと思い仕方なく合意したのだった。
そのうち、犬社会にとって“電柱“は「征服」を象徴する”御神体“として崇められ、電柱の廃材置き場が”聖地“とされたのだ。
だからそこは「完全中立区域」となり、何犬も争うことを禁じられそれを破ったものは保健所に処分されるという法律までも制定されたのだった。


しかしある日、アコが部下犬と、“お散歩ルート”の電柱廃材置き場である”聖地“の前を通った時、運悪くたまたまキラとかち合ってしまった。
「実に嫌な奴と会ってしまったもんだ。 できればこんなに良い“散歩日和”に気分を壊されたくない」と思ったアコはキラをさりげなく無視し電柱にマーキングして一礼し“お参り”を済ませた。

「おや、アコさんじゃありませんか?」 白々しくキラが声をかけてきた。
この聖地は中立区域、最も“礼を重んじる場所”であるのでこのまま無視するわけにもいかず、「ああ、キラさんごきげんよう」とそそくさと帰ろうとした。
その時キラはにやりと笑い、すれ違い様に「田舎犬のくせに」と言った。 この聖地では攻撃されまいと踏んだ言動だった。
でも、それを聞いたアコはプチッと頭のどこかで血管が切れる音を聞くと、我を忘れ振り向くが先か噛みつくが先かキラの首元に襲いかかった! 
「キャンキャンキャンッ!」 キラは血しぶきとともに悲鳴を上げた。


すると部下犬が、

「アコ殿! 電柱でござる~!」

… もし、電柱があれば車の突進事故のガードになるし、愛の告白ができない女の子が隠れることだってできるし、何より犬も棒に当ってこそ本当の価値があると思うのだ。

電柱を見るとそんな気がしてならない。




Posted by ayanpa | 使い道のない雑文 |2005年09月18日 | Comments [0] | Trackbacks [0]



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